ハンガリー共和国。人里はなれた廃墟の教会に一人暮らす「クウェデュー」という名の男がいる。
人前に滅多に姿を見せないこの男の職業は、ヴァンパイア・ハンター。吸血鬼を封じ、殺す仕事である。
自身も“始祖”と人間との間に産まれたダンピール(半吸血鬼)であり、その実力は“絶対に殺せない”といわれる始祖系の吸血鬼をも狩るほど。 裏社会や吸血鬼に関する業界では今やその名を知らない者はいないとさえ言われるほどの伝説的ハンターである。
研究所で人為的に“造られた”実験体である・数年前に騎士団養成学校にいた・特殊部隊の作戦でその姿を見た・警官を殺した極悪人である・等々、裏でささやかれる噂は数知れず…しかしその真偽はどれも定かではない。
ただ一つ確かなこと。彼は仕事に赴くとき、フードつきの古風なロングコートに身を包み、十字架を模した巨大なリボルバーを装備して行くという。
特に決まった名前もなく、単に“クウェデューのリボルバー”とだけ呼ばれるその銃は、マグナムリボルバーをベースに特別に誂えられた「対吸血鬼専用」のカスタムである。
銃身7インチ。純銀弾頭を用いた.357口径専用マグナム弾を6発装填。 銃身下に装着されたフラッシュライトは吸血鬼の苦手とする紫外線を照射する。クウェデューが初めて“始祖”級の相手を下した際には無数の蝙蝠に姿を変えて不定形だった相手にこれを浴びせ、能力を封じた上で一気に決着をつけたとされる。
特徴的な角張った“十字架型バレル”には中央の細い十字を基に凝ったエングレーヴィングが施されている。弾丸だけではなく、吸血鬼にとってはこの重厚なバレルでの直接打撃でさえかなりの脅威
グリップには磔キリスト像が拘束されているかのように無造作にレザーバンドで巻かれ、その底部には3本の銀スパイクががっちりと固定されている。このグリップで獲物を抑え、時に殴りつけ、致命傷を負わせることさえできる。
これだけ「ヴァンパイア狩り」に特化したこのカスタム銃は、かつてクウェデューが独立してこの稼業を始めた際、古くからの友人だった技術者が贈ったもの。噂では、何故かその男もまた吸血鬼であったとか。
ともかく、かなりの年月を共に戦い抜いてきたこの銃にクウェデューは特に愛着があるらしく、仕事のないときにはよく銃の手入れをしたり弾丸を磨いているらしい。
今宵は満月。もうじき狩りの依頼が舞込んでくるはずだ。 その時、獲物となった吸血鬼は心底恐怖するだろう。巨大な十字架の銃に。最強のヴァンパイア・ハンターの瞳に。
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